築地市場の豊洲移転で思うこと
築地市場の豊洲への移転まで、あと2か月半。いよいよ秒読みとなりました。私も、新市場への車の乗り入れの許可申請書を提出したりしてと、引っ越しが近づいていることを徐々に実感してきています。
その一方で、ここにきて改めて新市場建設地の未解決の土壌問題や仲卸業者の意見を取り入れずに作った新市場の使い勝手の悪さが指摘されだしていて、新市場建設業者に関する落札不正疑惑問題の発覚と相まって、小池百合子新都知事が移転時期の見直しに言及するなど、先の読めない状況になってしまいました。築地の仲卸さんと話しても、利用者無視のドタバタ劇に振り回されて、困惑や怒りの声を聞きます。
毎日利用している私からしますと、市場は近いに越したことがありません。豊洲に行くとなると、おそらく往復で小一時間は余計にかかりそうですので、今のように毎朝自分自身で買い付けに行けるかどうかもわかりませんので、うちの仕入れや仕込みも見直しが必要になってきます。
昭和10年に出来た現在の築地市場施設は、確かにかなりのおんぼろです。大雨が降れば雨漏りはするし、漏電によるボヤ騒ぎはしょっちゅうですし、丸々太ったミッキーマウスたちの運動会も毎朝繰り広げられています。もともとが貨物列車での輸送をメインに考えての設計ですから、膨大に膨れ上がった現代のトラック輸送に対応しきれていません。構内を縦横無尽に走り回っている気の荒い人が運転するターレーやフォークリフトと人との接触事故も何度も見かけています。21世紀の流通システムに対応した、清潔で整理された市場に作り変えた方がいいことは、おそらく誰が見ても明らかだと思います。
一番いいのは、移転することなくこの築地の場所で、市場業務を行いながら新市場施設を建設することなのでしょうが、実際 以前それは試みられたようなのですが、やはり業務と建設を同じ敷地内で並行して行うということは、建設期間の超長期化などが問題視され、頓挫してしまったそうです。
本来であれば、移転先の土壌問題など、もう少し時間をかけてじっくりと調査して解決策を確立してから移転を決定すればよかったのでしょうが、市場跡地の再開発やそれに伴う高速道路の建設をオリンピックまでに間に合わせることや、巨額のお金が動くことで利権が生まれることが優先されて話が進んでしまいました。おそらく、これからは、移転決定に関する不正問題や、責任の擦り付け合いの茶番劇が行われるのでしょう。
いずれにせよ、東京都による市場の再構築が、江戸時代の日本橋魚河岸時代から日本の食を守ってきた市場の方々や東京都民の方を見ていないことは明らかになってしまいました。
今日、東京の飲食店、そして日本料理そのものが、海外からより注目されてきているなかで、それを支える新市場機能が十分に発揮されて、安全で信頼されるものであることを切に願います。