季節のかき揚げ 二種
天ぷらは、揚げるのも食べるのも大好きな私ですが、なかでも季節の食材を使ったかき揚げは、私の好きな天ぷらの一つです。
特に、旬の食材二種を組み合わせてかき揚げにするのが私のちょっとした得意技で、この組み合わせを考えるのが、また大きな楽しみでもあります。
この季節のかき揚げは、何と言っても桜海老でしょう。例年より半月以上も遅く、また入荷量も少ないのが気になるところですが、静岡県・由比海岸からの春を告げる代名詞です。この桜海老は、同じ静岡県の浜名湖特産の生海苔と合わせてかき揚げにいたします。海老の香ばしさと磯の香りがよく合います。
そしてこれから初夏に向けてあさだで活躍するのが、「空豆と新生姜のかき揚げ」です。空豆のほくほくした甘さと、新生姜のシャキッとした食感と爽やかな辛味がうまくマッチした、これからの季節にピッタリの組み合わせのかき揚げになりました。
二種以上の食材を組み合わせたかき揚げは、何を合わせても美味しいかというとそういうわけではありません。食材の形状がそろっていたほうが形を整えやすいですし、火の通りやすいもの・通りにくいものもあります。また二種が同じ食感ですと、食べていてもなんだかよくわからないし、ということになります。旬のものを組み合わせたいという、自分の中のルールもあります。
以前、「フルーツトマトとバジルのかき揚げ」という組み合わせを思いついて、何度かの試作の後にお店でお出ししたのですが、結局ピンと来なくてお蔵入りしてしまった組み合わせもあります。その一方で、今では冬の名物になりました「牡蠣と百合根のかき揚げ」は、自分でいうのもなんですがなかなかのヒット作です。
かき揚げを召し上がっていただいたお客様から「こんな組み合わせのかき揚げ、今まで食べたことないけど、美味しいね。」とお言葉を頂けるのが、私のかき揚げつくりの最高の喜びです。その一言を頂きたくて、日夜あーでもないこーでもないと、食材たちとにらめっこをしては、思いを巡らしています。