「開運」土井酒造場に体験実習に行ってきました
1月23日から2泊3日の泊まりがけで静岡県掛川市にある土井酒造場さんに大吟醸酒造りの勉強に行ってきました。土井酒造場さんと言えば、日本でも指折りの名杜氏・波瀬 正吉さんが杜氏としていらっしゃり、銘酒「開運」を造っている酒蔵です。
酒どころと言いますと、東北や北陸地方をイメージしますが、近年静岡県のお酒はとても評価が高く、あさだでも「開運」はじめ「磯自慢」や「臥龍梅」など人気のお酒が多数あります。そんな、静岡酒の躍進の秘密に少しでも触れられたらという思いで体験実習に参加してきました。
掛川周辺は、日本海側から関ヶ原を超えてやってくる「遠州のからっ風」の影響で、雪こそ降らないもののこの季節とても冷え込みます。この寒気が繊細なお酒つくりには欠かせない条件の一つになります。
また、土井酒造場さんでは、2キロ離れたところにある名湧水「長命水」をタンクローリーで運んで仕込み水として使用されていました。大吟醸酒用の酒米の洗米・浸水時に、その貴重な水を惜しげもなく大量に使用している光景は圧巻で、日本のように清潔な水が豊富な気候風土だからこそ、日本酒のようなピュアなお酒が生まれるのだろうと実感させられるシーンでした。
静岡県では、県をあげて酒質の向上に取り組まれていて、その一つが「静岡酵母」と呼ばれる新酵母の開発です。中でも、大吟醸酒用の「HD-1」の開発には、土井酒造場の土井蔵元と波瀬杜氏が大変尽力されたそうで、独自の酒造りを追求する執念を感じました。
波瀬杜氏をはじめとするベテランの蔵人さん方は、皆さん能登地方からこの時期だけ来られている昔ながらの酒造りの雇用形態を維持している能登杜氏集団で、そこに地元静岡出身の次代を担う若手蔵人さんが通年社員という形で加わって、素晴らしいチームワークで酒造りの技術の継承が行われていました。
蔵人さんと言うと、徒弟制度のなか寡黙で少々気難しそうな職人という思い込みがありましたが、土井酒造場さんの蔵人の方々は、皆さん年齢やキャリアに関係なくお互いを尊重しあうあたたかな雰囲気がありました。
以前、あるお酒の本に「和醸良酒」という言葉をみつけました。字の如く「蔵の和こそ良いお酒を醸しだす」という意味ですが、その言葉がぴったりの土井酒造場さんだと思いました。
能登出身のベテラン蔵人さんが「静岡の人と能登の人は昔から相性がいいんですよ」と笑顔でおっしゃられていたのが大変印象的な今回の体験実習でした。