名物珍味 からすみ作り
今年も、秋恒例のあさだの名物珍味からすみ作りを始めました。
あさだの数ある自家製珍味の中で、作るのに最も神経を使うのは何と言っても「からすみ」です。
からすみの原材料である“ぼらの卵”のいいものは、9月の終わりから10月始めの2〜3週間しか築地市場に出回りません。
そのわずかな間に、一年分のからすみを仕入れて作り上げ、大切に保管しながら一年で使い切ります。
非常に高い仕入れ値を少しでも安くしたいと思い、出始めの高値の時期を見送っていると、品薄ですぐに市場から消えてしまった年もありましたので、少々高くてもいいものが出たら大量に買い込みます。
かなり、勇気のいる判断です。
仕込みの作業では、塩加減が本当に難しい。
何せ、途中で味見のチェックが出来ない代物ですから、塩っぱいかどうか出来上がって食べてみるまで分かりません。
かりに、途中で塩加減がおかしいと気付いても、もう手直しもできません。
一発勝負で、塩漬け・塩抜きを決めねばならず、あとは丁寧に天日干ししていきます。
だいたい10日から2週間で完成です。
からすみ作りは、熱海の料理旅館での修行時代に覚えました。
朝食用の干物から、梅干・奈良漬け等の漬物類、鮎の塩辛“うるか”、食前酒にいたるまで、全て自家製手作りの旅館でした。
実家に戻ってきて今年で8年目のからすみ作り。毎年この時期は、築地市場に向かう朝から緊張のしっぱなしです。
私にとってこの「からすみ作り」は、原材料の目利き・仕入れのタイミング、塩加減、仕上がりの見定めと、料理人としての才覚が問われる、この一年間の成長を試される年に一度の腕試しの料理といったところでしょうか。とても思い入れの強い料理です。
今年も、10月下旬には新物が完成します。